―下げ幅今年最大で7ヵ月半ぶり安値圏に、米国の相互関税発動を控え強まる警戒感―
年度末となる31日の東京市場は大荒れとなり、日経平均株価は昨年8月9日以来、およそ7ヵ月半ぶりの安値水準で取引を終えた。関税発動に伴う米国のインフレと景気減速への懸念から投資家心理が悪化し、日経平均の下げ幅は1500円を超えた。名実ともに新年度相場入りとなる東京市場において悲観ムードに好転の兆しはあるのか? この先の相場展望について、アイザワ証券投資顧問部ファンドマネージャーの三井郁男氏に緊急インタビューを行った。
●「関税発動後、景気刺激策への期待膨らむ可能性も」
三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー)
4月2日にトランプ米政権は相互関税を発動し、翌3日には自動車の追加関税を課す予定だ。関税発動が経済全体にネガティブな影響を及ぼすとの警戒感が強まるなか、トランプ大統領は依然として強硬姿勢を崩していない。今週は4月1日に米ISM製造業景況感指数が公表され、4日には3月の米雇用統計が公表される。センチメント系指標の悪化はある程度想像がつく話ではあるが、雇用統計のようなハードデータが悪化した場合は、リスク回避的な姿勢が一段と強まりかねない。米国株の調整を背景とした逆資産効果が、米国経済を押し下げるリスクも否定できない状況だ。一方、一連の関税が発動された後、トランプ大統領が米国経済の悪化を回避するため、景気刺激策を打ち出すシナリオも存在する。
新年度入りとなる日本の機関投資家は、期初の段階で利益を確保するために、売りから入ることとなるだろう。年度末に自粛される企業の自社株買いも、新年度になってすぐに活発化するとは想定しにくく、日本株の需給環境が好転するのには時間がかかりそうだ。ただし、東証株価指数(TOPIX)ベースでのPER(株価収益率)は足もとで13倍台前半と、バリュエーションの観点で売りが売りを呼ぶような展開になることは考えにくい。日経平均はこの先1ヵ月間は、3万5000円から3万7500円の範囲で推移するとみている。
国内では石破政権の支持率が低下しており、このままでは参院選で自民党は苦戦を強いられることとなりそうだ。自民党内で「ポスト石破」を探る動きが広がり、マーケットにおいて新体制で打ち出される景気浮揚策への期待が膨らむ形となれば、日本株に下支え効果をもたらすことになる。また、3月期決算企業の本決算発表シーズンに入れば、資本効率を高めるための積極的な自社株買いのスタンスが顕在化することとなるだろう。マクロ環境に不透明感が強い状況にあるものの、高水準の賃上げを背景に日銀は利上げに舵を切りやすい状況となっている。その意味で、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などメガバンク株や上位地銀を物色対象から外すことは難しい。収益性の更なる向上が期待される鹿島 <1812> [東証P]など建設セクターも引き続き注目されることとなるに違いない。防衛関連では、三菱重工業 <7011> [東証P]や川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]といった重工大手にとどまらず、三菱電機 <6503> [東証P]なども収益拡大が期待でき、継続して投資家の関心を集めることとなりそうだ。
(聞き手・長田善行)
<プロフィール>(みつい・いくお)
1984年からファンドマネージャーとして日本株運用を40年以上にわたり続ける。国内銀行投資顧問、英国の投資顧問会社、国内大手信託銀行を経て、投資顧問会社を設立。2013年からアイザワ証券の投資顧問部で日本株ファンドマネージャー。自ら企業調査するボトムアップ運用を続けている。